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「算法少女」とは、江戸時代に1人の町娘が出版した算数の本(和算書)です。
当時では、唯一女性が出した和算書のようで、今でも珍しい本として扱われています。
今、小説や漫画として出回っている本は、その本をもとにして作られたものです↓↓
「算法少女」の内容・あらすじ
「どうも変だわ…」
一人の町娘が、浅草の御本堂の通りに掲げられた絵馬を見て呟いた。
「変…って何が変なのさ、おあきちゃん」
連れの1人が不思議そうに尋ねた。
「うん…どうも、あの絵馬に書かれた算法の問題、少し間違ってるようなのよ」
武士のプライドを傷つけた「算法少女」あき…
その日、江戸浅草は観音様の参詣の人で賑わっていた。
町娘のあきという少女も、近所の子たちと一緒に浅草の御本堂へお参りに出かけていた。
「さぁどいた、どいた!」
そこへ、人ごみをかき分けて、ある集団がやってきた。
自分たちの算法の実力を自慢しようと、絵馬を奉納しにきたのだ。
通常、絵馬を奉納する時は、何かを成し遂げた時や何か願い事をする時に掲げられるのだが、
どうやら今回は、武士の子供が自分の算法の腕前を見せびらかすために、自分で作った問題を絵馬に掲げたようなのだ。
しかし、ここで冒頭のあの言葉だ。
「変だわ…」
算法好きの町娘あきは、掲げられた武士の問題を見て、つい呟いてしまったのだ。
すると、からかい好きな1人の友達はすかさず、
「わーい!これ間違ってるんだって!!」
と大声を出した。
「なにっ!!」
と絵馬を掲げた武士の子供たちがやってくる。
どこが間違っているのか説明しろと詰め寄ってきた。
町娘のあきは相手が悪いとただ謝り続けるが、武士のほうはあきの答えを聞くまで引き下がる気配はない。
仕方なく、あきは掲げられた算法の問題の間違いを指摘した。
すると、みるみるうちにその武士の顔が青ざめていく…
「気分が悪くなってきた、今日はこれで失礼する!お前たち、あの絵馬は降ろしておけ!!」
なんと、町娘あきは、武士の子供を算法で打ち負かしてしまったのだ。
なんとなく、嫌な予感がしたあきだったが、周りは町娘が武士を負かしたと大喜び!
そこへ、古風な言葉を使う1人武士がきて、意味ありげな言葉を残し去っていった。
「あの男のこと、十分気をつけられるがよろしかろう…」
この出来事がきっかけとなり、町娘のあきは、殿様も関わる流派同士の算法対決に巻き込まれることになるのだ。。
「算法少女」の感想・レビュー・要約
ではここからは、「算法少女」の感想とポイントをいくつかに分けて紹介していきましょう↓↓
「算法(算数)の重要性」が広まっていなかった時代…
今回の本「算法少女」の時代背景となる江戸時代では、
まだまだ算法の重要性が世間に広まってはいませんでした。
(算法は今で言う、算数や数学のことです。)
あきは、父親の影響で算法を好きになり、その重要性にも気づいていたのですが、周りにはあまり理解されませんでした。
「算法少女」の中で当時の様子を表す、母親との会話があります。
それは、手まりつきに誘われたあきが、算法の勉強をしたくて、誘いを断った時の母親の対応です↓↓
これが江戸時代の算法(算数・数学)への一般の人たちの評価でした。
算法よりも、踊り・三味線・琴…などを習ってたほうが、武家へ呼ばれたりする可能性が高かったので、女の子は特に算法を覚えることなど無駄だと思われてたんですね。
武家屋敷に、行儀見習いというかたちで何年か奉公すると、女としての教養や行儀作法を身につけることができるといわれて、このごろ、町のゆたかなくらしの家では、娘たちを、なんとかして大名や、大身の旗本の屋敷につかえさせようと、けんめいだった。
そうしなければ、よい家の娘としての資格が、ないようにかんがえられていた。(P-62)
算法の重要性を知っていたのは、一般の人だと一部の人たちだけだったようです。。
算法は「流派」で争っていた…
今でこそ、誰でも学校で習う算法(算数)ですが、
江戸時代では流派ごとに違った解き方をしたりして、学び合うという精神が薄かったようです。
算法家の世界では、この国のなかでさえ、他流のしごとをみとめようとしません。まして、西洋の算法など、あたまからばかにして、うけつけようとしない。わが国の算法家の学力がりっぱなものであることは、この鎌田氏の研究ひとつをみても、よくわかります。しかし、この国の算法に西洋の算法をとりいれれば、研究はもっともっとすすむはずです。いやそうしなければ、われわれはおくれてしまうのです。(P-196)
自分たちの世界だけに固執するから、成長を遅らせる…
現代では、世界的視点が常識になってきていますが、
江戸時代のころは、日本以外は認めない!という風潮が一般的だったのでしょう。
まぁ今の日本は、世界に振り回されすぎな気もしますが…(-_-;)
「算法少女」では、江戸時代の空気を感じながら、当時の算法(算数・数学)の歴史を知るのにも役立ちます。
ぜひご覧になってみてください(^^♪
「おあきちゃん、手まりつきにかない?」
けいが、妹のみつの手ひいてさそいにきたときも、
「きょうはやめるわ」
とことわって、算盤にむかっていった。
「おやまあ、またつまらないことを…」
母はひどくきげんを悪くした。
「ほんとによ、おどりとか、三味線とかの芸ごとを習っているのなら、それでお屋敷へあがるというあてもあるけれど、女が算法をやってなんになるんです。手まりをついてるほうが、よっぽどましですよ」(P-64-65)